簿記や会計を勉強していると、「実現主義」という言葉が出てきます。
少し難しそうに聞こえますが、考え方はそれほど複雑ではありません。
ざっくりいうと、
「収益は、取引が実現した段階で認識しよう」
という考え方です。
では、「実現した」とはどういうことなのでしょうか?
実現主義とは?
実現主義とは、主に収益をいつ認識するかについての考え方です。
例えば、商品を販売する会社を考えてみましょう。
商品を作った
↓
「来年、この商品が売れるかもしれない」
↓
まだ売上にはしない
商品を作っただけでは、まだ販売が実現したわけではありません。
「将来売れるかもしれない」というだけで、今の売上として計上することはできません。
実際の取引が進み、収益を認識できる状態になった段階で売上を認識する、というのが実現主義の基本的な考え方です。
「売れるかもしれない」では、売上にしない
もう少し具体的に考えてみましょう。
あなたが商品を100万円で販売する予定だとします。
① 商品を作った
まだ販売していない
→ 売上ではない
② 商品を販売した
取引が実現した
→ 収益を認識
この違いが、実現主義を理解するうえで大切なポイントです。
「契約しただけ」でも売上とは限らない
では、商品を100万円で販売する契約を結んだらどうでしょうか?
契約を結んだだけで、すぐに売上になるとは限りません。
販売契約を結んだ
↓
商品やサービスの提供がまだ
↓
それだけでは売上とは限らない
↓
顧客への商品・サービスの提供
↓
収益を認識
つまり、「将来売れそう」ではなく、実際の取引が進み、収益を認識できる状態になったかが重要なのです。
現金を受け取った日=売上の日、ではない
ここで、もう一つ注意したいことがあります。
実現主義は、現金主義とは違います。
例えば、商品を100万円で販売し、代金は翌月に受け取ることになったとします。
商品を販売
↓
収益100万円を認識
↓
代金は翌月に受け取る
この場合、販売時点で収益を認識し、まだ受け取っていない100万円は売掛金になります。
つまり、
実現主義
取引が実現したことを重視
現金主義
現金を受け取った時点を重視
という違いがあります。
発生主義との違いは?
実現主義とよく一緒に出てくるのが「発生主義」です。
この2つは似ていますが、同じものではありません。
発生主義
「収益や費用を、いつ発生したものとして認識するか」
実現主義
「収益を、いつ認識できる状態になったと考えるか」
例えば、8月に電気を使い、9月に支払ったとします。
この場合、8月に発生した電気代を8月の費用として考えるのが発生主義の考え方です。
一方、実現主義は主に収益の認識について考えるものです。
そのため、実務では、
発生主義 → 収益・費用について「いつ発生したか」を考える
実現主義 → 収益について「いつ認識するか」を考える
と整理すると分かりやすいでしょう。
なぜ「実現したとき」に収益を認識するの?
ここが、実現主義を理解するうえで一番大切なところです。
もし、「将来売れると思う」というだけで売上にしてよかったら、どうなるでしょうか?
「この商品は来年きっと売れる!」
↓
売上100万円を計上
↓
利益が増える
これでは、会社が自分の都合で売上を作れてしまいます。
そこで、実際の取引が実現したことを基礎として収益を認識するという考え方が重要になります。
これは、財務諸表を見る人にとっても大切な考え方です。
現在は「収益認識に関する会計基準」で具体化されている
ここまで読むと、「商品を販売したら、その日に売上にすればいいの?」と思うかもしれません。
実際の会計では、もう少し細かく考えます。
現在の日本の会計では、「収益認識に関する会計基準」によって、収益をいつ認識するのかについて具体的なルールが定められています。
基本的には、企業が顧客との契約における履行義務を充足した時に収益を認識するという考え方です。
顧客との契約
↓
商品・サービスを提供する
↓
履行義務を充足する
↓
収益を認識
そのため、現在の会計を理解するうえでは、単に「実現主義=商品を売ったら売上」と覚えるよりも、「顧客に対して、約束した商品やサービスをいつ提供したのか」と考えることが大切です。
実現主義を身近な例で考えてみよう
例えば、会社が商品を100万円で販売したとします。
商品を顧客に引き渡し、契約上の約束を果たしたとしましょう。
商品100万円を販売
↓
顧客に商品を引き渡す
↓
履行義務を充足
↓
収益100万円を認識
代金をその場でもらわなくても、売掛金として処理することができます。
これが、実現主義をイメージするうえで分かりやすい例です。
まとめ
実現主義とは、簡単にいうと、
収益を、取引が実現した段階で認識するという考え方
です。
ポイントは、
- 「将来売れそう」というだけでは収益にしない
- 現金を受け取った日だけを基準にするわけではない
- 実際の取引が実現し、収益を認識できる状態になったかが重要
- 現在は「収益認識に関する会計基準」によって、具体的な収益認識のルールが定められている
というところです。
また、発生主義は収益・費用の発生を考える考え方、実現主義は主に収益をいつ認識するかを考える考え方と整理すると、両者の違いが見えてきます。
会計は、「お金が動いたか」だけではなく、
「その取引がいつ実現し、収益を認識できるのか」を考える。


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