会社は、建物や機械、店舗など、事業のためにさまざまな資産を持っています。
これらの資産は、購入したときの金額をそのまま帳簿に残しておけばいいのでしょうか。
実は、そうとは限りません。
例えば、1,000万円で購入した機械があったとします。
ところが、その機械を使っていた事業が不振になり、今後その機械から得られる収益が大きく減ってしまいました。
すると、
「この機械を1,000万円の資産として
帳簿に残しておいて、本当にいいのだろうか?」
という問題が出てきます。
そこで登場するのが、「減損(げんそん)」という考え方です。
減損とは?
減損とは、簡単にいうと、
資産の収益性が低下し、
帳簿価額を回収できない可能性が高くなったときに、
その帳簿価額を切り下げること
です。
「減損」という言葉は、文字どおり「価値が減ること」を意味します。
会計では、資産の価値が大きく低下しているにもかかわらず、帳簿上だけ高い金額のまま残しておくことを避けるために、減損という処理を行います。
なぜ減損が必要なの?
会社の財務諸表は、会社の現在の状態をできるだけ適切に表す必要があります。
例えば、1,000万円で購入した機械があるとします。
ところが、その機械を使っている事業が大幅に縮小し、今後その機械から生み出されるキャッシュ・フローがほとんど期待できなくなったとします。
それなのに、帳簿上はずっと「1,000万円の資産」として残っていたらどうでしょうか。
帳簿上
機械 1,000万円
↓
でも、実際には将来ほとんど収益を生まない
↓
資産を実態より高く表示している可能性がある
これでは、財務諸表を見る人が会社の状態を正しく判断できません。
そこで、資産から将来回収できる金額を考え、必要に応じて帳簿価額を引き下げます。
減価償却とは何が違うの?
減損を理解するとき、減価償却との違いを知っておくと分かりやすくなります。
| 減価償却 | 減損 | |
|---|---|---|
| 考え方 | 資産の取得原価を使用期間にわたって費用配分する | 資産の収益性が低下した場合などに帳簿価額を切り下げる |
| イメージ | 予定どおり少しずつ減らす | 価値が大きく下がったときに見直す |
例えば、100万円の機械を5年間使うとします。
減価償却では、基本的にその機械の取得原価を、使用する期間にわたって少しずつ費用にしていきます。
一方、減損は、
「この機械は、もう帳簿に残っている金額を回収できそうにない」
という状況になったときに、その資産の帳簿価額を見直すものです。
減価償却
= 予定どおり費用配分
減損
= 資産の収益性が大きく低下したときの価値の見直し
どんなときに減損を考えるの?
例えば、次のような状況です。
- 事業の収益性が大きく悪化した
- 店舗の売上が大幅に減少した
- その資産を使っている事業から十分なキャッシュ・フローが得られなくなった
- 事業環境が大きく変化した
- 資産の市場価格が大きく下落した
- 資産が以前のような収益を生み出せなくなった
このような状況があると、
「この資産は、帳簿価額に見合うだけの価値を
まだ持っているのだろうか?」
と考える必要が出てきます。
「価値が下がったら、すぐ減損」ではない
ここは少し注意が必要です。
資産の市場価格が少し下がったからといって、必ず減損損失を計上するわけではありません。
日本の減損会計では、まず減損の兆候があるかどうかを検討します。
そして、減損の兆候がある場合には、その資産または資産グループについて、将来キャッシュ・フローなどをもとに、減損損失を認識する必要があるかを判断します。
つまり、
資産の状況が悪化した
↓
減損の兆候があるか確認
↓
減損損失を認識する必要があるか判定
↓
必要であれば帳簿価額を切り下げる
減損すると、何が起こるの?
減損を行うと、資産の帳簿価額を減らします。
その減少額は、原則として「減損損失」という費用として計上されます。
例えば、帳簿価額1,000万円の機械について、減損損失300万円を計上することになったとします。
| 減損前 | 減損損失 | 減損後 |
|---|---|---|
| 1,000万円 | ▲300万円 | 700万円 |
この場合、300万円が減損損失として損益計算書に費用として計上され、機械の帳簿価額は700万円になります。
減損すると利益も減る
減損損失は費用なので、減損を計上すると、その期の利益は減少します。
減損損失を計上
↓
費用が増える
↓
利益が減る
↓
資産の帳簿価額も減る
そのため、減損損失は会社の業績に大きな影響を与えることがあります。
減損は「会社の業績が悪いからする」の?
単純に「赤字だから減損」というわけではありません。
大切なのは、その資産について、帳簿価額を回収できるだけの将来の収益やキャッシュ・フローが期待できるかということです。
例えば会社全体では利益が出ていても、ある店舗だけが大幅な赤字になっていて、今後も改善が見込めないということがあります。
この場合、その店舗に関連する資産について減損を検討することがあります。
反対に、一時的に業績が悪化したからといって、必ず減損になるわけではありません。
「回収できる金額」を考える
減損会計を少し専門的に見ると、重要になるのが「回収可能価額」という考え方です。
簡単にいうと、
「この資産から、最終的にどれくらい回収できるのか?」
ということです。
日本基準では、回収可能価額は、正味売却価額と使用価値のいずれか高い方とされています。
ここでは、まず「資産を売ったらどれくらいになるか」と「そのまま使い続けたら将来どれくらいのキャッシュ・フローを生むか」の両方から考える、とイメージすれば十分です。
減損を一言でいうと
「この資産、本当にこの金額の価値がありますか?」
という視点から、資産の帳簿価額を見直す会計処理
これが、減損を理解するための基本的なイメージです。
まとめ
減損とは、資産の収益性が低下し、帳簿価額を回収できない可能性が高くなった場合などに、その帳簿価額を切り下げる会計処理です。
ポイントは、
- 減損は、資産の価値や収益性が大きく低下したときに問題になる
- 帳簿価額をそのままにしておくと、資産を実態より高く表示することになる場合がある
- 減損損失を計上すると、利益が減少する
- 減価償却は予定どおり取得原価を費用配分するもの
- 減損は、資産の収益性が低下したときに帳簿価額を見直すもの
- 減損の判断では、将来キャッシュ・フローなどをもとに資産から回収できる金額を考える
減価償却は「予定どおり少しずつ」
減損は「価値が大きく下がったときに見直す」
この違いを押さえておくと、減損会計がぐっと分かりやすくなります。
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