「前受金」と「前受収益」。
どちらも、
「お金を先にもらった」
ときに出てくる勘定科目です。
名前も似ているので、
「結局、何が違うの?」
と思いますよね。
実は、この2つは「先にもらった」という点では同じですが、
そのお金が何に対応しているのか
を見ると、違いが分かります。
この記事では、前受金と前受収益の違いを、初心者向けにできるだけ簡単に整理します。
まず結論!前受金と前受収益の違い
最初に結論から見てみましょう。
| 前受金 | 前受収益 | |
|---|---|---|
| 共通点 | お金を先にもらう | お金を先にもらう |
| 何に対応? | 商品などの提供 | 将来の期間に対応する収益 |
| ポイント | まだ商品などを提供していない | まだサービスを提供していない期間がある |
| イメージ | 「先に代金をもらった」 | 「将来分の収益を先にもらった」 |
| 分類 | 負債 | 負債 |
| その後 | 商品などを提供すると売上などになる | 時間の経過に応じて収益になる |
一言でいうと、
前受金=「商品などを提供する前に、先にもらったお金」
前受収益=「将来の期間に対応する収益を、先にもらったもの」
です。
前受金とは?
まず、前受金から確認しましょう。
前受金とは、
商品やサービスを提供する前に、その代金を先に受け取ったときに使う勘定科目
です。
例えば、A社がB社から商品の注文を受けたとします。
商品の代金は10万円。
B社から、
「先に10万円を支払います」
と言われました。
A社は10万円を受け取りました。
しかし、商品はまだB社に渡していません。
この場合、
前受金
として処理します。
前受金の流れをイメージしよう
① 商品を注文してもらう
↓
② 代金を先にもらう
↓
③ まだ商品を渡していない
↓
④ 前受金として処理する
↓
⑤ 商品を渡す
↓
⑥ 売上になる
つまり、
前受金は「売上になる前の、先にもらったお金」
と考えると分かりやすいでしょう。
前受収益とは?
一方、前受収益は、
将来の期間に対応する収益を、先に受け取ったときに使う勘定科目
です。
例えば、会社が建物を貸しているとします。
1年間分の家賃120万円を、4月1日にまとめて受け取ったとしましょう。
お金はすでに120万円受け取っています。
でも、4月1日の時点では、
まだ1年間分のサービスを提供したわけではありません。
4月分は4月に対応し、
5月分は5月に、
6月分は6月に、
というように、時間の経過に応じて収益になります。
そのため、まだ将来の期間に対応する部分は、
前受収益
として処理します。
前受収益の流れをイメージしよう
① 将来の期間について契約する
↓
② お金を先にもらう
↓
③ まだサービスを提供していない期間がある
↓
④ 前受収益として処理する
↓
⑤ 時間が経過してサービスを提供する
↓
⑥ 提供した分が収益になる
つまり、
前受収益は「時間が経つにつれて、少しずつ収益になるもの」
と考えると分かりやすいでしょう。
ここが一番大事!「何を待っているのか」が違う
前受金と前受収益を区別するときは、
「何を待っているのか?」
と考えると分かりやすくなります。
前受金の場合
商品などの提供を待っている
例えば、
「商品10万円を注文して、代金を先に払った」
↓
まだ商品を受け取っていない
↓
前受金
です。
前受収益の場合
時間の経過とサービスの提供を待っている
例えば、
「1年間分の家賃を先に受け取った」
↓
まだこれから11か月分のサービス提供が残っている
↓
前受収益
です。
「商品」と「期間」で考えると分かりやすい
初心者の方は、
前受金=商品
前受収益=サービス
と覚えたくなるかもしれません。
これは大まかなイメージとしては役立ちますが、少し注意が必要です。
本当に大切なのは、
「商品かサービスか」だけではありません。
ポイントは、
「将来のどの期間に対応する収益なのか」
です。
前受収益は、特に、
一定の期間にわたってサービスを提供し、その期間に応じて収益を認識する
ような取引で登場します。
そのため、
「サービスなら必ず前受収益」
というわけではありません。
ここは丸暗記しないようにしましょう。
具体例で比べてみよう
ここでは、分かりやすい2つのケースを比べてみます。
ケース① 商品を先に注文して、代金をもらった
A社はB社に商品10万円を販売します。
B社から10万円を先にもらいました。
しかし、商品はまだ発送していません。
この場合、
前受金
です。
なぜなら、
これから商品を提供する義務が残っている
からです。
商品を渡したら、
前受金 → 売上
となります。
ケース② 1年分の家賃を先にもらった
A社はB社に建物を貸しています。
1年間分の家賃120万円を先にもらいました。
しかし、まだこれから11か月分の期間が残っています。
この場合、
前受収益
として、まだ収益になっていない将来期間の分を処理します。
時間が経過してサービスを提供すると、
前受収益 → 受取家賃などの収益
となります。
前受金と前受収益は、どちらも「負債」
ここも共通しています。
前受金も前受収益も、負債です。
「お金をもらったのだから、資産では?」
と思うかもしれません。
確かに、お金を受け取ったので、
普通預金は増えます。
しかし、その代わりに会社には、
「これから商品やサービスを提供しなければならない」
という義務が残っています。
そのため、その義務を表す、
前受金・前受収益
は負債になります。
「お金をもらった=収益」ではない
前受金と前受収益の両方に共通する、とても大切なポイントです。
会計では、
お金を受け取ったタイミングと、収益が発生するタイミングは必ずしも同じではありません。
例えば、
商品を渡す前に代金をもらった
↓
お金は増えた
↓
でも、まだ商品を渡していない
↓
前受金
です。
また、
1年間分の家賃を最初にまとめてもらった
↓
お金は増えた
↓
でも、まだ1年間のサービスを提供していない
↓
前受収益
です。
つまり、
「お金をもらった」というだけでは、すぐに収益とは限らない
のです。
前受金と前受収益を図で考えてみよう
2つを並べてみると、違いがより分かりやすくなります。
前受金
お金を先にもらう
↓
まだ商品などを提供していない
↓
前受金
↓
商品などを提供
↓
売上などの収益
前受収益
お金を先にもらう
↓
まだ将来の期間のサービスを提供していない
↓
前受収益
↓
時間が経過してサービスを提供
↓
収益
「前払金」と「前払費用」も一緒に考えてみよう
ここまで来たら、以前の記事で紹介した、
前払金
前払費用
も一緒に考えると、かなり整理できます。
前払金
先に払う
→ あとで商品などを受け取る
前払費用
先に払う
→ あとでサービスを受ける
前受金
先にもらう
→ あとで商品などを提供する
前受収益
先にもらう
→ あとで期間に応じてサービスを提供する
4つを並べるとこうなる
| 勘定科目 | お金 | その後どうなる? | 分類 |
|---|---|---|---|
| 前払金 | 先に払う | 商品などを受け取る | 資産 |
| 前払費用 | 先に払う | 将来のサービスを受ける | 資産 |
| 前受金 | 先にもらう | 商品などを提供する | 負債 |
| 前受収益 | 先にもらう | 時間の経過に応じてサービスを提供する | 負債 |
この4つは、
「先に払うのか、先にもらうのか」
そして、
「何を待っているのか」
で整理すると覚えやすくなります。
前受金と前受収益、迷ったらどうする?
簿記の問題で迷ったら、次の順番で考えてみましょう。
STEP 1
お金を先にもらった?
↓
YES
STEP 2
まだ商品やサービスを提供していない?
↓
YES
STEP 3
ここから、
「何を待っているの?」
と考えます。
商品などの提供を待っている
↓
前受金
将来の期間にわたるサービスの提供を待っている
↓
前受収益
このように考えると、単純な丸暗記よりも判断しやすくなります。
前受金と前受収益の違いを一言でいうと?
一言でまとめるなら、
前受金=「先に代金をもらったけれど、まだ商品などを提供していない」
前受収益=「将来の期間に対応する収益を先にもらったけれど、まだその期間のサービスを提供していない」
です。
どちらも、
「先にもらったお金」
ですが、
前受金は「提供前の代金」
前受収益は「将来の期間に対応する収益」
という違いがあります。
まとめ
前受金と前受収益は、どちらも「先にお金をもらったとき」に登場する勘定科目です。
ポイントを整理すると、
| 前受金 | 前受収益 | |
|---|---|---|
| お金 | 先にもらう | 先にもらう |
| 何を待っている? | 商品などの提供 | 将来の期間に対応するサービス |
| その後 | 売上などになる | 時間の経過に応じて収益になる |
| 分類 | 負債 | 負債 |
そして、覚えておきたいのは、
「お金を先にもらった=すぐ収益」ではない
ということ。
お金を先にもらったあと、
まだ商品やサービスを提供する義務が残っている
のであれば、その時点では収益として処理できない部分があります。
前受金と前受収益の違いも、
「何を提供するのか」
そして、
「いつの期間の収益なのか」
を考えると、ぐっと分かりやすくなります。
簿記は勘定科目の名前を丸暗記するより、「お金をもらったあと、会社にはどんな義務が残っているのか?」と考えるのがポイントです。


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