「前受収益」という勘定科目を見て、
「お金を先にもらったのに、まだ収益じゃないの?」
と思ったことはありませんか?
前回の記事では、商品などを渡す前に代金を先にもらう**「前受金」**について説明しました。
では、
「前受金」と「前受収益」は何が違うのでしょうか?
ここが、簿記を始めたばかりの人には少し分かりにくいところです。
ポイントは、
「先にもらったお金が、何に対するものなのか?」
そして、
「いつの期間の収益なのか?」
です。
この記事では、前受収益について、できるだけ簡単に説明します。
前受収益とは?
前受収益とは、
将来の期間に対応する収益を、先に受け取ったときに使う勘定科目
です。
例えば、会社が建物を貸していて、毎月10万円の家賃を受け取っているとします。
4月に、4月分から翌年3月分までの1年間の家賃120万円をまとめて受け取ったとしましょう。
お金はすでに120万円受け取っています。
でも、4月の時点では、
まだ5月以降の期間については、サービスを提供していません。
つまり、
家賃を先にもらう
↓
これから毎月、建物を利用してもらう
↓
まだ将来の期間が残っている
↓
前受収益
という流れです。
「お金をもらったのに、なぜ収益じゃないの?」
ここが前受収益の一番大切なポイントです。
例えば、4月1日に1年間分の家賃120万円を受け取ったとします。
「120万円入金されたのだから、120万円の収益では?」
と思いますよね。
でも、4月1日の時点では、まだ1年間のサービスをすべて提供したわけではありません。
4月分については、4月に建物を利用してもらいます。
一方、5月以降の分については、
これから建物を利用してもらうことになります。
つまり、将来の期間に対応する分まで、4月の収益にしてしまうのは適切ではありません。
そのため、まだ将来の期間に対応する部分は、
前受収益
として処理します。
前受収益は「将来、サービスを提供する義務」
前受収益を理解するときは、
「お金をもらった」という事実だけを見るのではなく、その後に何が残っているのか
を考えると分かりやすくなります。
例えば、1年間分の家賃を先にもらったとします。
会社にはお金が入ってきました。
しかし、その代わりに、
「これから1年間、相手に建物を利用してもらう」
という義務があります。
つまり、
先にお金をもらった代わりに、将来にわたってサービスを提供する
という関係です。
そのため、まだ収益として認識していない将来分は、
負債
として扱います。
前受収益は「負債」
前受収益は、
負債
に分類されます。
「お金をもらったのだから、資産じゃないの?」
と思うかもしれません。
確かに、銀行口座にお金が入れば、
普通預金は増えます。
しかし、その代わりに会社には、
「これからサービスを提供しなければならない」
という義務があります。
この義務があるため、
前受収益=負債
となります。
イメージすると、
お金を先にもらう
↓
普通預金が増える
↓
でも、将来のサービス提供義務が残る
↓
前受収益という負債が発生する
ということです。
時間が経つと「収益」になる
では、前受収益はずっと負債なのでしょうか?
もちろん違います。
時間が経過して、実際にサービスを提供した分は、
収益
になります。
例えば、1年間分の家賃120万円を先にもらったとします。
1か月あたりの家賃は、
120万円 ÷ 12か月 = 10万円
です。
4月が終わると、4月分のサービスを提供したことになります。
そこで、
10万円が収益になります。
そして、残りの11か月分については、まだサービスを提供していません。
その部分は、引き続き前受収益です。
つまり、
お金を先にもらう
↓
前受収益1か月サービスを提供する
↓
1か月分が収益になるさらに1か月サービスを提供する
↓
さらに1か月分が収益になる……
1年間サービスを提供する
↓
前受収益がなくなる
という流れです。
前受収益の流れをイメージしよう
前受収益は、次のように考えると分かりやすいです。
① 将来のサービスについて契約する
↓
② お金を先にもらう
↓
③ まだサービスを提供していない期間がある
↓
④ その部分を前受収益として負債にする
↓
⑤ 時間が経過してサービスを提供する
↓
⑥ 提供した分を収益に振り替える
つまり、
前受収益は「これからサービスを提供することで、少しずつ収益になっていくお金」
と考えるとイメージしやすいでしょう。
具体例で見てみよう
会社が4月1日に、1年間分の家賃120万円を先に受け取ったとします。
1か月あたりの家賃は10万円です。
4月1日:1年分を先にもらった
まだ1年間のサービスを提供していません。
そのため、
借方:普通預金 1,200,000円
貸方:前受収益 1,200,000円
となります。
この時点では、
120万円すべてが収益ではありません。
4月末:1か月分のサービスを提供した
4月分の10万円について、サービスの提供が完了しました。
そこで、
借方:前受収益 100,000円
貸方:受取家賃 100,000円
とします。
これで、
4月分の10万円が収益になりました。
残りの110万円は、まだ5月以降の期間に対応するため、前受収益として残ります。
前受収益は「時間の経過」と関係が深い
前受収益の特徴は、
時間の経過に応じて収益になる
ことです。
例えば、
- 家賃
- 地代
- 保険料
- 一定期間にわたるサービス料
などが代表的なイメージです。
「1年間利用できるサービスの料金を、最初にまとめてもらう」
というような場合、
まだサービスを提供していない将来の期間の分は、すぐに収益にはしません。
時間が経過して、サービスを提供した分だけ収益にしていきます。
「前受金」と「前受収益」の違い
ここが一番重要です。
どちらも、
「先にお金をもらう」
という共通点があります。
では、何が違うのでしょうか?
前受金
商品などを提供する前に、代金を先にもらった
例えば、
- 商品の予約代金
- 商品の手付金
- 商品の内金
などです。
前受収益
将来の期間に対応する収益を、先にもらった
例えば、
- 家賃
- 地代
- 継続的なサービスの料金
などです。
簡単にいうと、
前受金=商品などの提供前に先にもらったお金
前受収益=将来の期間に対応する収益を先にもらったお金
という違いです。
例えば「商品」と「家賃」で比べてみよう
商品を先に注文してもらった
A社が商品10万円を販売します。
B社から10万円を先にもらいました。
でも、商品はまだ渡していません。
↓
前受金
です。
商品を渡したら、
前受金 → 売上
となります。
1年分の家賃を先にもらった
A社が建物を貸しています。
1年間分の家賃120万円を先にもらいました。
でも、まだこれから11か月分の期間が残っています。
↓
前受収益
です。
時間が経過してサービスを提供すると、
前受収益 → 受取家賃などの収益
となります。
「前払費用」と「前受収益」は反対のイメージ
ここで、前回の記事で紹介した、
前払費用
と比べると、さらに分かりやすくなります。
前払費用
自分が先にお金を払う
→ これからサービスを受ける
前受収益
自分が先にお金をもらう
→ これからサービスを提供する
つまり、
前払費用=先に払う側
前受収益=先にもらう側
です。
例えば、1年間分の保険料を先に支払った会社は、
前払費用
を計上します。
一方、1年間分の家賃を先に受け取った会社は、
前受収益
を計上することがあります。
同じ「先にお金が動く」取引でも、
自分が払う側なのか、もらう側なのか
で、勘定科目が変わります。
「未収収益」とも比べてみよう
もう一つ、名前が似ているのが、
未収収益
です。
これもセットで考えると分かりやすいでしょう。
前受収益
先にお金をもらう
→ これからサービスを提供する
未収収益
先にサービスを提供する
→ お金はあとでもらう
つまり、
前受収益=先にもらう
未収収益=あとでもらう
という関係です。
どちらも「収益」に関係していますが、
お金を受け取るタイミングが反対
です。
4つを並べると分かりやすい
ここまで出てきた勘定科目を、まとめてみましょう。
| 勘定科目 | お金 | サービスなど | 会計上の分類 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 先に払う | あとで受ける | 資産 |
| 前受収益 | 先にもらう | あとで提供する | 負債 |
| 未収収益 | あとでもらう | 先に提供する | 資産 |
| 未払費用 | あとで払う | 先に受ける | 負債 |
これを見ると、
「お金」と「サービス」のどちらが先なのか
で整理できることが分かります。
「お金をもらった=収益」ではない
前受収益を理解するうえで、もう一つ覚えておきたいことがあります。
それは、
「お金をもらったこと」と「収益が発生したこと」は、必ずしも同じではない
ということです。
例えば、
1年間分のサービス料金を最初にまとめてもらった場合、
入金した日
と
収益になる日
は違います。
お金は最初に全部受け取っていても、
サービスを提供した分だけ、少しずつ収益になります。
これは、会計で大切な、
「どの期間の収益なのか」
という考え方につながっています。
迷ったときの考え方
前受収益が出てきたら、次の3つを考えてみましょう。
STEP 1
先にお金をもらった?
↓
YES
STEP 2
将来の期間にわたってサービスを提供する?
↓
YES
STEP 3
まだサービスを提供していない期間が残っている?
↓
YES
この場合は、
前受収益
を考えてみましょう。
前受収益を一言でいうと?
ここまでを一言でまとめるなら、
前受収益=「将来の期間に対応する収益を、先にもらったもの」
です。
そして、まだサービスを提供していない部分については、
「これからサービスを提供しなければならない」という義務
が残っています。
そのため、
前受収益は負債
になります。
時間が経過してサービスを提供すると、
収益
に変わっていきます。
まとめ
前受収益とは、
将来の期間に対応する収益を、先に受け取ったときに使う勘定科目
です。
ポイントを整理すると、
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| いつ使う? | 将来の期間に対応する収益を先に受け取ったとき |
| 何を表す? | 将来、サービスを提供する義務 |
| 分類は? | 負債 |
| 代表例 | 家賃・地代・継続的なサービス料など |
| 時間が経つと? | 収益になる |
そして、似た勘定科目との違いは、
前受金=商品などを提供する前に、先に代金をもらう
前受収益=将来の期間に対応する収益を、先にもらう
前払費用=将来の期間に対応する費用を、先に払う
未収収益=すでに収益が発生しているけれど、まだお金をもらっていない
と考えると分かりやすいでしょう。
「先にもらったから収益」と考えるのではなく、
「そのお金は、いつの期間の収益なの?」
と考えてみる。
これが前受収益を理解するポイントです。
簿記は、勘定科目を丸暗記するより、「お金をもらったあと、いつの期間にサービスを提供するのか」を考えると、ぐっと分かりやすくなります。


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