経理の仕事はごまかしがきかない。だからこそ、フェアな仕事だと思う

経理のお仕事・キャリア

経理の仕事を長くやっていると、少し不思議なことに気づきます。

それは、その人がどれくらい会計を理解しているのか、どれくらい仕事をしているのか、どれくらい考えているのかが、意外とよく分かるということです。

数字を扱う仕事だからでしょうか。

あるいは、毎月同じような仕事を積み重ねるからでしょうか。

経理の経験を積むと、その人が何を分かっていて、何がまだ分かっていないのかが、発言や仕事への向き合い方から、かなり見えてきます。

そして私は、そこが経理という仕事の面白いところの一つだと思っています。

経理は、ごまかしがききにくい仕事

仕事には、いろいろな能力が必要です。

人とのコミュニケーションが得意な人もいれば、プレゼンテーションが得意な人もいます。

仕事の進め方が上手だったり、自分の成果を分かりやすくアピールできたり、周囲との関係をうまく築いたりすることも、立派な仕事の能力です。

ですから、そういった能力を否定するつもりはありません。

ただ、経理・会計の仕事には、少し違ったところがあります。

実際にどこまで分かっているのか、どこまで考えているのかが、仕事をしているうちに見えてきてしまうのです。

例えば、ミーティングで数字について説明するとします。

「この数字はこうなっています」と説明するだけなら、それほど難しくありません。

でも、

「なぜこうなったんですか?」

「前年と比べるとどうですか?」

「この数字の根拠は何ですか?」

「仕訳はどうなっていますか?」

「では、この場合はどう処理しますか?」

と、一つずつ掘り下げていくと、その人がどこまで理解しているのかが見えてきます。

これは、なかなかごまかせません。

「分からない」と言えないこともある

経理の仕事をしていると、ミーティングなどで、分からないことを聞かれる場面があります。

そんなとき、

「分かりません」

と言うのは、なかなか勇気がいるものです。

周りの人がみんな分かっているように見えると、

「こんなことも分からないと思われたくない」

「今さら聞けない」

と思ってしまうこともあります。

そして、その場をなんとか乗り切るために、十分に分かっていないのに回答してしまうことがあります。

あるいは、本当はよく分かっていないのに、質問や確認をせず、なんとなく分かったような雰囲気で話を合わせてしまうこともあります。

でも、経理・会計では、これはあまりおすすめできません。

なぜなら、その場を乗り切っただけでは終わらないからです。

後になって、

「その数字の根拠は?」

「なぜこの処理にしたんですか?」

「この前提で合っていますか?」

と、さらに深く確認されることがあります。

そのとき、最初の段階で理解できていなかったことが、結局は表に出てしまいます。

「分からない」と言えることは、むしろ大切

私は、経理・会計の仕事では、「分からない」と言えることは決して恥ずかしいことではないと思っています。

例えば、

「すみません、そこは私の理解が十分ではありません。もう少し詳しく教えていただけますか?」

と聞く。

あるいは、

「今のお話は、○○という理解で合っていますか?」

と確認する。

これは「仕事ができない人」の行動ではありません。

むしろ、自分がどこまで分かっていて、どこから分かっていないのかを認識しているということです。

そして、その境界線が分かっていれば、そこから先を勉強することができます。

一番もったいないのは「分かったつもり」になること

分からないこと自体は、悪いことではありません。

最初からすべてを知っている人など、ほとんどいません。

問題なのは、分からないことをそのままにしてしまうことです。

さらに、分からないことを隠すために、なんとなく分かったように振る舞ってしまうと、本人も「自分は分かっていない」ということに気づきにくくなります。

そうすると、同じところで何度もつまずいてしまいます。

逆に、

「ここが分からない」

と自分で認識できれば、そこから先に進むことができます。

調べる。

人に聞く。

本を読む。

実際の仕訳や資料を確認する。

そして、自分の言葉で説明してみる。

そうやって一つずつ理解していけばいいのです。

経験を積んだ人には、実力が見えてしまう

経理の仕事を長くしていると、もう一つ感じることがあります。

その人がどれくらい努力しているのかも、意外と分かるということです。

普段の発言。

質問の仕方。

問題が起きたときの対応。

分からないことへの向き合い方。

新しい仕事を任されたときの姿勢。

そういったものを見ていると、

  • 普段から勉強しているのか
  • 新しいことをインプットしているのか
  • 自分の頭で考えているのか
  • 今までやったことのない仕事に挑戦しようとしているのか
  • 目の前の仕事をただこなしているだけなのか

といったことが、少しずつ見えてきます。

これは、単に知識量だけの話ではありません。

「この人は仕事について、ちゃんと考えているな」

ということは、普段の仕事ぶりから伝わってくるものです。

「仕事をしているように見せる」必要はない

経理の仕事では、忙しそうにしていることや、たくさん仕事をしているように見せること自体には、それほど意味がありません。

経験を積んだ人から見ると、その人が実際にどれくらい仕事をしているのかは、仕事そのものに表れるからです。

例えば、ミーティングでたくさん発言しているかどうかだけではありません。

質問に対してどう答えるのか。

分からないことをどう確認するのか。

問題が起きたときに、どこまで自分で調べるのか。

今までやったことのない仕事に対して、どう向き合うのか。

「去年と同じようにやればいい」と考えるのか。

それとも、

「もっと効率化できないかな?」

「この数字について、もう少し深く理解してみよう」

「やったことはないけれど、この仕事にも挑戦してみよう」

と考えるのか。

こうした違いは、時間が経つほど大きくなっていきます。

ですから、経理では「仕事をしているように見せること」よりも、「実際に仕事ができるようになること」に時間を使うほうが、ずっと大切だと思います。

実力不足なら、それと向き合えばいい

ここまで読むと、

「経理って、怖い仕事なのでは?」

と思うかもしれません。

でも、私はむしろ逆だと思っています。

だからこそ、経理はフェアな仕事なのです。

実力が足りないなら、勉強すればいい。

経験が足りないなら、一つずつ経験すればいい。

分からないことがあれば、調べればいい。

そして、教えてもらったことをそのまま暗記するだけではなく、

「なぜ?」

と考えてみる。

そうやって積み重ねていけば、少しずつですが、確実にできることが増えていきます。

コツコツやった人は、いつの間にか強くなる

経理の仕事では、毎月同じような作業を繰り返すこともあります。

でも、同じ仕事をしていても、そこで何を考えているかによって、数年後の実力は大きく変わります。

例えば、毎月の月次決算でも、

「去年と同じように処理する」

だけではなく、

「なぜこの数字になったのだろう?」

「前月と比べて何が変わったのだろう?」

「この処理はもっと効率化できないだろうか?」

「この会計処理の考え方を、もう少し勉強してみよう」

と考えてみる。

その小さな積み重ねが、数年後には大きな違いになります。

以前なら分からなかった話が分かるようになる。

以前は人に聞いていたことを、自分で判断できるようになる。

数字を見ただけで、

「これはちょっとおかしいな」

と気づけるようになる。

誰かに質問されたときに、自分の言葉で説明できるようになる。

そして、いつの間にか、周りから

「この人に聞けば分かる」

と思ってもらえるようになる。

これが、経理の仕事で経験を積むということなのかもしれません。

会社の評価とは別に、自分の中に実力が残る

もちろん、努力したからといって、それが必ずしも、そのまま会社の評価や昇進につながるとは限りません。

会社によって評価の仕組みも違いますし、タイミングや環境によっても変わります。

それでも、経理・会計の仕事には、一つ大きなメリットがあります。

身につけた実力は、自分の中に残るということです。

仕訳ができるようになる。

月次決算ができるようになる。

決算を締められるようになる。

監査法人とやり取りできるようになる。

税務について理解できるようになる。

経営者に数字を説明できるようになる。

こうした経験や知識は、会社が変わっても、自分の中に残ります。

会社からの評価とは別に、「自分はこれができる」という実力が少しずつ積み上がっていくのです。

経理は、実力も努力も見えてしまう仕事

経理は、ごまかしがききにくい仕事です。

分かっていないことも、少し深く聞けば分かってしまいます。

仕事をしているように見せているだけなのか、本当に考えて仕事をしているのかも、経験を積んだ人から見ると、意外と分かります。

でも、同じように、

勉強していること。

努力していること。

新しいことにチャレンジしていること。

自分の頭で考えていること。

も、ちゃんと伝わります。

だから、無理に「仕事をしている自分」を演出する必要はありません。

分からないことは、分からないと言えばいい。

分からないことを調べればいい。

少し難しそうな仕事にも、挑戦してみればいい。

そして、毎日少しずつ勉強すればいい。

だから、経理はフェアな仕事だと思う

経理は、派手な仕事ではありません。

営業のように、大きな契約を取ってくる仕事でもありません。

プレゼンテーションで華々しく成果をアピールする仕事でもありません。

でも、私は経理という仕事は、かなりフェアな仕事だと思っています。

ごまかそうと思っても、数字を追えば分かってしまう。

知ったふりをしても、少し深く話せば分かってしまう。

一方で、コツコツ勉強して、考えて、経験を積んできた人も、ちゃんと分かります。

その人がどれだけ努力してきたのかは、発言や仕事への向き合い方に、自然と表れるからです。

今日覚えたことが、明日の仕事に役立つ。

今日考えたことが、数年後の自分の判断力になる。

今日できなかったことが、いつかできるようになる。

そうやって積み上げたものは、簡単にはなくなりません。

経理は、実力不足も透けて見える仕事です。

でも同じように、努力していることも、考えていることも、チャレンジしていることも、透けて見える仕事です。

だからこそ、私は経理という仕事は、フェアな仕事だと思っています。

最初から何でも知っている必要はありません。

分からないことを一つずつ理解していけばいい。

できないことを一つずつ、できるようにしていけばいい。

そうやってコツコツ積み重ねていく人にとって、経理は、とても面白い仕事だと思います。

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