「この会社は債務超過です」
ニュースや会社の決算資料などで、「債務超過」という言葉を目にすることがあります。
なんとなく「借金が多い会社なのかな?」というイメージを持つかもしれません。
でも、会計上の「債務超過」を理解するうえで大切なのは、借入金がいくらあるかではありません。
ポイントになるのは、貸借対照表(BS)にある「純資産」です。
純資産がマイナスになっている状態を、基本的に「債務超過」といいます。
では、なぜ純資産がマイナスになるのでしょうか?
また、「赤字」と「債務超過」は何が違うのでしょうか?
そして、債務超過になったら、すぐに会社は倒産するのでしょうか?
この記事では、債務超過とは何なのかを、BSとPLのつながりから考えてみます。
債務超過とは、どんな状態?
まず、債務超過を一言でいうと、
「会社の純資産がマイナスになっている状態」
です。
BSの基本的な関係は、次のようになっています。
資産 = 負債 + 純資産
これを少し変形すると、
純資産 = 資産 - 負債
となります。
つまり、
資産よりも負債のほうが大きくなると、純資産がマイナスになります。
これが債務超過です。
| 資産 | 負債・純資産 |
|---|---|
| 資産 600万円 | 負債 1,000万円 純資産 ▲400万円 |
この場合、
600万円 - 1,000万円 = ▲400万円
となるため、純資産はマイナス400万円です。
このような状態が、債務超過です。
「純資産がマイナス」とはどういうこと?
では、「純資産がマイナス」とは、会社の中で何が起きているのでしょうか。
例えば、会社が設立されたときに、株主から1,000万円の出資を受けたとします。
単純化すると、最初のBSは次のようになります。
| 資産 | 負債・純資産 |
|---|---|
| 現金・預金 1,000万円 | 資本金 1,000万円 |
この状態では、資産1,000万円、負債0円、純資産1,000万円です。
ところが、その後、会社が赤字を出すと、その損失は純資産を減少させます。
例えば、累積で700万円の赤字になったとします。
| 資産 | 負債・純資産 |
|---|---|
| 資産 300万円 | 負債 0円 純資産 300万円 |
まだ純資産はプラスです。
さらに赤字が続いて、累積赤字が1,200万円になったとします。
単純化すると、純資産はマイナスになります。
1,000万円の元々の純資産 - 1,200万円の累積損失 = ▲200万円
このように、これまでの赤字の積み重ねによって、純資産がマイナスになることがあります。
これが債務超過になる一つの典型的な流れです。
借入金がなくても、債務超過になる
ここは、債務超過を理解するうえで重要なポイントです。
「債務超過」という言葉から、「借金がたくさんある会社」をイメージする人もいるかもしれません。
しかし、借入金があるかどうかは、債務超過の本質ではありません。
例えば、借入金がゼロでも、会社が赤字を積み重ねれば純資産が減っていきます。
そして、純資産がマイナスになれば債務超過です。
一方、借入金が多くても、資産も十分にあれば、純資産がプラスになることがあります。
| 会社A | 会社B | |
|---|---|---|
| 資産 | 1,500万円 | 600万円 |
| 負債 | 1,000万円 | 800万円 |
| 純資産 | 500万円 | ▲200万円 |
| 債務超過 | なし | あり |
会社Aは負債が1,000万円ありますが、資産が1,500万円あるため、純資産は500万円です。
一方、会社Bは負債が800万円で、会社Aより少ないですが、資産が600万円しかないため、純資産はマイナス200万円です。
つまり、「借金が多いか少ないか」だけを見ても、債務超過かどうかは分かりません。
BS全体を見ることが大切なのです。
累積赤字が続くと、なぜ債務超過になる?
では、なぜ赤字が続くと債務超過になるのでしょうか。
ここでは、PLとBSのつながりを見ると分かりやすくなります。
会社が利益を出すと、その利益は最終的に純資産の増加につながります。
逆に、会社が赤字になると、その損失は純資産を減少させます。
イメージすると、
赤字が発生する
↓
利益剰余金などが減少する
↓
純資産が減少する
↓
赤字が積み重なって純資産がマイナスになる
↓
債務超過
という流れです。
つまり、債務超過というのは、突然BSだけに現れるものではありません。
過去の利益や損失が積み重なった結果として、BSの純資産に表れている状態とも考えることができます。
ここを見ると、PLとBSがつながっていることも分かります。
「赤字」と「債務超過」は同じではない
「赤字」と「債務超過」は、似ているようで意味が違います。
赤字は、基本的にはある期間の損益について、費用が収益を上回り、利益がマイナスになっている状態です。
一方、債務超過は、BSにおいて純資産がマイナスになっている状態です。
そのため、赤字になったからといって、すぐに債務超過になるわけではありません。
例えば、純資産が1,000万円ある会社が、その年に100万円の赤字を出したとしても、純資産は単純化すれば900万円です。
赤字ではありますが、まだ債務超過ではありません。
一方、赤字が何年も積み重なり、純資産がマイナスになれば、債務超過になります。
つまり、
赤字=ある期間の損益の状態
債務超過=BS上の純資産の状態
と考えると分かりやすいでしょう。
債務超過になると、会社のBSはどうなる?
債務超過になった会社のBSを、単純化して見てみましょう。
| 資産 | 負債・純資産 |
|---|---|
| 現金・預金 売掛金 その他資産 合計 800万円 | 借入金 買掛金など 合計 1,000万円 純資産 ▲200万円 |
左側の資産が800万円なのに対して、右側の負債が1,000万円あります。
そのため、
800万円 - 1,000万円 = ▲200万円
となり、純資産がマイナス200万円です。
これが債務超過です。
ここで重要なのは、会社のBSを見ることで、「会社がこれまでどれだけ利益や損失を積み重ねてきたのか」という結果が見えてくることです。
債務超過という言葉だけを見るのではなく、
「なぜ純資産がマイナスになったのだろう?」
と考えてみると、会社の状態をより深く理解できます。
債務超過=倒産、ではない
ここも、債務超過を理解するときに混同しやすいポイントです。
債務超過だからといって、それだけで直ちに倒産するという意味ではありません。
債務超過は、あくまでBS上で純資産がマイナスになっている状態です。
一方、会社が実際に事業を続けられるかどうかには、手元の現金や預金、売掛金の回収、資金調達など、さまざまな要素が関係します。
例えば、BS上では債務超過でも、事業を続けながら資金を確保できている会社も考えられます。
逆に、純資産がプラスでも、手元資金が不足して支払いができなくなることはあります。
ここから、
「利益・純資産」と「現金・資金繰り」は同じではない
という、会計を理解するうえで大切な考え方にもつながります。
債務超過になると何が問題なのか?
債務超過になると、会社にとってさまざまな面で注意が必要になります。
例えば、会社の純資産がマイナスということは、単純に考えると、会社が持っている資産だけでは負債をすべてカバーできない状態です。
そのため、金融機関からの借入や取引先との信用など、資金調達や取引関係に影響する可能性があります。
また、赤字が続いて債務超過になっているのであれば、なぜ赤字が続いているのかを考える必要もあります。
ただし、ここで大切なのは、
「債務超過だから悪い」と単純に判断することではありません。
重要なのは、
「なぜ債務超過になったのか?」
「一時的なものなのか?」
「今後、利益を出せる見込みはあるのか?」
「資金繰りは大丈夫なのか?」
など、会社の状況を一つずつ見ていくことです。
同じ「純資産▲1,000万円」という会社でも、その背景は会社によって違います。
債務超過を理解すると、BSの見方が変わる
債務超過という言葉を覚えるだけなら、
「純資産がマイナスの状態」
で終わります。
でも、もう一歩考えてみると、会社のBSの見方が変わってきます。
例えば、
「なぜ純資産がマイナスになったのだろう?」
と考える。
すると、過去の赤字が積み重なっているのかもしれない、と考えられます。
さらに、
「なぜ赤字が続いているのだろう?」
「営業活動で利益が出ているのか?」
「一時的な損失ではないか?」
「現金は残っているのか?」
と、さらに考えることができます。
こうしていくと、「債務超過」という一つの言葉から、
PL → 利益・損失 → 純資産 → BS → 資金繰り
というように、会社の数字をつなげて見ることができます。
これが、会計を「暗記」ではなく「考える」ことの一つの例です。
まとめ|債務超過は「純資産がマイナス」というBSの状態
債務超過とは、基本的に、
「会社の純資産がマイナスになっている状態」
のことです。
BSの関係で考えると、
資産 - 負債 = 純資産
なので、
資産 < 負債
になると、純資産がマイナスになります。
そして、債務超過は「借入金が多い会社」という意味ではありません。
借入金がなくても、累積赤字によって純資産がマイナスになれば、債務超過になることがあります。
また、
赤字 = 債務超過
でもありません。
赤字はある期間の損益の状態。
債務超過は、BS上で純資産がマイナスになっている状態です。
さらに、
債務超過 = 直ちに倒産
でもありません。
債務超過というBS上の状態と、実際の資金繰りや事業継続の問題は、分けて考える必要があります。
「債務超過」という言葉を見たときに、単に「借金が多い会社」と覚えるのではなく、
「なぜ純資産がマイナスになっているのだろう?」
と考えてみる。
そこから、過去の赤字、利益剰余金、BS、そして会社の資金繰りまで見えてきます。
会計の数字は、一つひとつを別々に覚えるのではなく、つながりを考えることで、会社の状態が見えてきます。
債務超過も、その一つです。


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