海外の経理求人で求められる「Full Set Accounting」とは? 経理担当者が目指したいスキル

経理のお仕事・キャリア

海外の経理求人を見ていると、「Full Set Accounting」という言葉をよく見かけます。

シンガポールなどの求人では、「Full Set Accountant」という職種名で募集されていることもあります。

では、Full Set Accountingとは、どのような仕事なのでしょうか。

簡単にいうと、日々の記帳だけでなく、売掛金・買掛金の管理、銀行残高の照合、月次決算、年次決算など、会社の経理業務を一通り担当できることを指します。

もちろん、会社の規模や求人によって、求められる業務範囲は異なります。それでも、海外の経理求人でこの言葉が使われていることから、経理業務を幅広く理解し、自立して仕事を進める力が求められていることが分かります。

この記事では、Full Set Accountingの意味を整理しながら、経理担当者としてどのようなスキルを身につけていけばよいのかを考えてみます。

Full Set Accountingとは?

Full Set Accountingは、会社の会計帳簿を一通り管理し、日常の取引記録から決算・財務報告まで、幅広い経理業務を担当することを意味します。

例えば、シンガポールのFull Set Accountantの求人では、次のような業務が挙げられています。

  • 売掛金・買掛金の管理
  • 総勘定元帳の管理と仕訳の記帳
  • 銀行明細と会計帳簿の照合
  • 月次決算・年次決算
  • 財務諸表や経営管理資料の作成
  • 税務申告や監査対応のサポート
  • 資金繰りや支払管理

すべての求人で、これらの業務を一人ですべて担当するとは限りません。会社によっては、税務や給与計算などを別の担当者や外部の専門家が行うこともあります。

大切なのは、単に仕訳を入力できるということではなく、会社のお金の動きが、どのように帳簿に記録され、決算や財務諸表につながるのかを理解していることです。

仕訳入力だけでは、経理の仕事は完結しない

例えば、会社が取引先から商品やサービスを購入したとします。

請求書を受け取り、仕訳を入力すれば、それで仕事は終わりでしょうか。

実際には、その後にもさまざまな業務があります。

  • 請求書の内容や金額が正しいか確認する
  • 買掛金として適切に記録する
  • 支払期日を管理する
  • 銀行から支払った金額と帳簿を照合する
  • 月末に未払残高が正しいか確認する
  • 決算で適切な期間の費用として計上されているか確認する

一つひとつの作業だけを見ると、別々の仕事に感じるかもしれません。

しかし、これらはすべて、ひとつの取引を正しく記録し、管理するためにつながっています。

仕訳を入力することは、経理業務の大切な一部分です。ただし、入力した仕訳が正しいか、残高が実際の状況と一致しているか、決算にどのような影響があるかまで確認できて、初めて経理業務全体が見えてきます。

Full Set Accountingで求められる主なスキル

では、経理業務を一通り担当できるようになるためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。

日常経理:取引を正しく記録する

まずは、日々の取引を正しく記録できることが基本です。

  • 仕訳入力
  • 請求書や領収書の確認
  • 売掛金・買掛金の管理
  • 入金・支払の管理
  • 経費精算

ここで大切なのは、仕訳の形を暗記するだけではなく、取引によって会社の資産・負債・収益・費用がどのように変化するのかを理解することです。

取引の意味を理解していれば、いつもと違う取引が発生したときにも、考えながら処理できるようになります。

残高照合:帳簿と実際の数字を一致させる

仕訳を入力したら、帳簿の残高が正しいかどうかを確認する必要があります。

例えば、次のような照合です。

  • 銀行口座の残高と会計帳簿の預金残高
  • 売掛金の帳簿残高と取引先別の未回収額
  • 買掛金の帳簿残高と取引先別の未払額
  • 貸付金・借入金の帳簿残高と契約や残高確認資料

帳簿に数字が記録されていることと、その数字が正しいことは別です。

差異があれば、その原因を調べ、必要に応じて修正する。こうした確認作業も、経理担当者にとって重要なスキルです。

月次決算:毎月の会社の状況をまとめる

日常経理の次に身につけたいのが、月次決算です。

月次決算では、毎月の取引を締め、会社の財政状態や経営成績を確認できるようにします。

  • 銀行口座や各勘定科目の残高照合
  • 未払費用や未収収益などの決算整理仕訳
  • 前払費用や未払費用などの期間配分
  • 固定資産や減価償却費の確認
  • 損益計算書・貸借対照表の確認
  • 前月や予算との比較、差異の分析

月次決算ができるようになると、単に取引を記録するだけでなく、会社の数字をまとめ、内容を確認する力が身についていきます。

年次決算:1年間の会計を締める

さらに経験を積むと、年次決算に関わる機会も増えていきます。

年次決算では、1年間の取引を整理し、決算整理仕訳を計上したうえで、財務諸表を作成します。

会社によっては、次のような業務も担当します。

  • 決算整理仕訳の作成
  • 固定資産や棚卸資産の確認
  • 各勘定科目の残高確認
  • 貸借対照表・損益計算書などの作成
  • 税理士や監査法人への資料提供
  • 税務申告や監査に関する対応

年次決算では、日常経理や月次決算で積み重ねてきた知識がつながります。

日々の取引を正しく理解していなければ、決算で残高の誤りや処理漏れを見つけることも難しくなります。

Full Set Accountingを目指すなら、何から始めればよい?

ここまで読むと、「こんなに幅広い業務を覚えなければいけないのか」と感じるかもしれません。

でも、最初からすべてを一人でできる必要はありません。

大切なのは、今できることを土台にして、少しずつ担当できる範囲を広げていくことです。

ステップ1:仕訳の意味を理解する

まずは、取引が発生したときに、なぜその勘定科目を使うのかを説明できるようにしましょう。

ステップ2:担当する取引の流れを理解する

請求書の受領から記帳、支払、残高確認まで、取引がどのようにつながっているのかを把握します。

ステップ3:残高照合ができるようになる

帳簿と銀行明細、取引先別の残高などを照合し、差異があれば原因を調べられるようにします。

ステップ4:月次決算を理解する

決算整理仕訳や期間配分の考え方を学び、月次の損益や財政状態を確認できるようにします。

ステップ5:年次決算や財務諸表へ範囲を広げる

日常経理と月次決算の経験を土台に、年次決算や財務諸表の作成、税務・監査対応などへと経験を広げていきます。

実際の仕事では、会社の規模や担当業務によって経験できる範囲が異なります。すぐに年次決算まで担当できなくても、焦る必要はありません。

今の仕事について「自分が担当している作業は、経理全体のどこにつながっているのだろう?」と考えるだけでも、理解は深まっていきます。

目指したいのは、すべての作業を一人で抱えることではない

Full Set Accountingという言葉から、「経理の仕事を何でも一人でこなさなければならない」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、目指したいのは、すべての作業を一人で抱え込むことではありません。

経理業務全体の流れを理解し、自分が担当する業務を適切に処理し、必要な確認や判断ができること。

これが、経理担当者として身につけたい実力だと思います。

分からない税務論点があれば、税理士に確認する。複雑な会計処理であれば、専門家や上司に相談する。会社の規模が大きければ、業務を分担し、チームで決算を進めることもあります。

専門家に相談することと、自分で何も理解していないことは違います。

自分で取引の内容や論点を理解しているからこそ、適切な質問ができ、受け取った回答を業務に反映できるのです。

会計の知識は、仕事の選択肢を広げてくれる

日常経理だけでなく、月次決算や年次決算まで理解できるようになると、担当できる仕事の幅が広がっていきます。

例えば、海外拠点の経理、複数法人の会計管理、決算業務、財務報告など、さまざまな仕事に挑戦する土台になります。

もちろん、Full Set Accountingの経験があれば、どの国でも同じように仕事ができるというわけではありません。会計基準、税制、法令、会計システムなどは国や会社によって異なります。

それでも、取引を理解し、帳簿を整え、残高を照合し、決算を行うという基本的な考え方は、経理の仕事を学ぶうえで大切な土台になります。

海外で働くことを目指している人に限らず、今の会社で経理として成長したい人にとっても、経理業務全体を理解することは大きな目標になるはずです。

まとめ|少しずつ、経理全体を理解できる人材を目指そう

海外の経理求人でよく見かけるFull Set Accountingは、日常経理から決算まで、会社の経理業務を幅広く担当することを表す言葉です。

そこでは、仕訳入力だけでなく、売掛金・買掛金管理、銀行照合、月次決算、年次決算、財務諸表の作成など、さまざまなスキルが求められます。

すべてを最初からできる必要はありません。

まずは仕訳の意味を理解する。次に、担当する取引の流れを把握する。そして、残高照合、月次決算、年次決算へと、少しずつ理解を深めていきましょう。

大切なのは、目の前の作業をこなすだけでなく、その作業が経理全体のどこにつながっているのかを考えることです。

一つひとつの知識をつなげていけば、経理業務全体が少しずつ見えるようになっていきます。

会計を「暗記」ではなく、
「考え方」から理解する。

その積み重ねが、経理全体を理解できる力につながります。

仕訳ができることは、経理の第一歩。そこから業務の流れを理解し、少しずつ担当できる範囲を広げていきましょう。

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