「経理の仕事が多すぎて、人手が足りない……」
中小企業では、こうした悩みは珍しくありません。
経理担当者が一人しかいなかったり、経理以外の仕事まで兼任していたりすると、月末や決算期には特に忙しくなります。
では、経理の人手が足りないとき、どうすればいいのでしょうか。
まず思いつくのは、
- 経理担当者を採用する
- 記帳を外注する
- 税理士に経理をお願いする
といった方法です。
もちろん、これらも選択肢の一つです。
ただ、ここで一度考えてみたいことがあります。
「そもそも、その経理作業は
人が一件ずつやる必要があるのだろうか?」
特に取引数が多い会社では、単純に記帳を外注することが最適とは限りません。
大切なのは、「人を増やす」「外注する」の前に、経理の仕事そのものを見直すことです。
経理の人手不足=記帳を外注、ではない
経理の仕事が多いとき、よくある解決策が「記帳代行を利用する」という方法です。
たしかに、記帳を外部に任せれば、社内の経理担当者が仕訳入力をする時間を減らすことができます。
しかし、すべての会社にとって、それが効率的とは限りません。
特に、毎月の取引件数が非常に多い会社では、外注費が取引件数に応じて増えることがあります。
一方で、自社で会計システムを整備し、銀行口座やクレジットカードなどのデータを自動で取り込めるようにすれば、取引件数が多くても、入力作業そのものを大幅に減らせる可能性があります。
つまり、
「取引が多いから外注する」
ではなく、
「取引が多いからこそ、どうやって効率化するか?」
と考えることが大切です。
まずは「経理の仕事」を分解してみる
経理が忙しいときに、いきなり「人を増やそう」と考えるのではなく、まず現在の仕事を分解してみます。
例えば、こんな仕事があります。
| 経理業務 | 考えたいこと |
|---|---|
| 仕訳入力 | 自動取得・定型化できないか? |
| 請求書処理 | 電子化・自動連携できないか? |
| 経費精算 | 従業員側の入力を効率化できないか? |
| 入金確認 | 自動消込などを利用できないか? |
| 月次決算 | 手順を標準化できないか? |
| 決算・税務 | 専門家と役割分担できないか? |
こうして分解すると、「経理の仕事が多い」という一言の中に、性質の違う仕事がたくさん含まれていることが分かります。
そして、それぞれに対して解決方法も違ってきます。
取引数が多い会社ほど「自動化」を考える
例えば、毎月5,000件の取引がある会社を考えてみましょう。
これをすべて人が一件ずつ入力していたら、当然ながら大きな負担になります。
でも、銀行口座やクレジットカードなどの明細を会計ソフトに自動連携できる場合はどうでしょうか。
定型的な取引について仕訳ルールを設定できれば、経理担当者が一件ずつ手入力する必要がなくなる部分があります。
大量の取引
↓
銀行・カード・請求データなどを自動取得
↓
定型的な仕訳を自動化
↓
経理担当者は「確認・判断」に集中
この考え方なら、取引件数が多いこと自体が、必ずしも「人を増やさなければならない」という意味にはなりません。
経理の仕事は「入力」だけではない
ここは、経理の人手不足を考えるうえで非常に重要なところです。
経理の仕事というと、「仕訳を入力すること」をイメージしがちです。
しかし、本当に大切なのは入力そのものではありません。
例えば、
- この取引は何を意味しているのか
- この仕訳で正しいのか
- 売掛金はきちんと回収できているか
- 買掛金の支払いに問題はないか
- 先月と比べて数字がおかしくないか
- 利益は出ているのに、なぜ現金が減っているのか
- 来月の資金は足りるのか
といったことを確認するのも経理の重要な役割です。
だからこそ、経理担当者が入力作業に追われて、こうした「確認する・考える」時間がなくなってしまうのは、もったいないことです。
「人にしかできない仕事」と「仕組みに任せられる仕事」を分ける
経理の効率化を考えるときは、仕事を大きく二つに分けて考えると分かりやすくなります。
仕組みに任せやすい仕事
- 定型的な仕訳入力
- 銀行明細の取り込み
- カード明細の取り込み
- 請求書データの取り込み
- 定型的な経費精算
人が判断する仕事
- イレギュラーな取引の判断
- 数字の異常を発見する
- 月次決算の確認
- 資金繰りを考える
- 経営者への報告・説明
もちろん、すべての業務を完全にこの二つに分けられるわけではありません。
ただ、こうした視点を持つだけでも、経理担当者の時間をどこに使うべきなのかが見えてきます。
それでも忙しいなら、外注を考える
ここまでやっても経理担当者の負担が大きいのであれば、そこで初めて外注を検討します。
例えば、
- 定型的な記帳
- 給与計算
- 請求書発行
- 定型的な支払処理
- 一部の経理事務
などです。
ただし、外注するときも、「経理を丸ごと外に出す」必要はありません。
社内に残す仕事と、外部に任せる仕事を分けることができます。
社内
数字を確認する・判断する・経営者に説明する
+
外部
定型的な入力・事務作業などをサポートする
クラウド会計サービスでは、社内だけでなく税理士などの外部専門家とデータを共有し、会計業務の一部を分担する使い方もできます。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
「自社でやる」と「外注する」は、二択ではない
経理業務について、
「全部自社でやる」
VS
「全部外注する」
と考えてしまうと、選択肢が狭くなります。
実際には、その間にたくさんの選択肢があります。
| 方法 | 向いている場面 |
|---|---|
| 自社で処理 | 社内で数字を細かく確認したい |
| システムで自動化 | 定型取引が多い |
| 一部を外注 | 定型業務だけ負担が大きい |
| 専門家と分担 | 決算・税務など専門性が必要 |
| 採用 | 社内に継続的な経理機能が必要 |
つまり、会社の状況に応じて組み合わせればいいのです。
外注するときも「コスト」を考える
外注には当然、費用がかかります。
そのため、単純に「人を雇うより外注のほうが安い」と考えるのも危険です。
例えば、自社ですでに効率的に処理できている業務まで外注すると、かえってコストが高くなる可能性があります。
J-Net21でも、すでに社内で効率化されている業務をアウトソーシングすると、逆にコストが上昇する可能性があるため、外注する業務を慎重に選ぶ必要があるとしています。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
だからこそ、
「この仕事を外注したら、社内の何時間が減るのか?」
と考えることが大切です。
外注費だけを見るのではなく、社内でかかっている時間や、その時間を別の仕事に使える価値まで含めて考えます。
経理の人手不足は「採用」の問題だけではない
経理の人手が足りないと、つい、
「経理担当者をもう一人採用しよう」
と考えます。
もちろん、それが必要な会社もあります。
しかし、採用しても、古い業務フローのまま仕事を増やしてしまえば、また忙しくなってしまうかもしれません。
だからこそ、採用を考える前に、
- そもそも必要のない作業はないか
- 同じデータを何度も入力していないか
- 自動化できる作業はないか
- 定型化できる作業はないか
- 外部に任せたほうがよい作業はないか
を一度見直してみることが大切です。
2026年版の中小企業白書では、中小企業が導入しているITツール・サービスの中で「クラウド会計・給与計算」が最も多く、調査対象企業の69.4%が全社または一部業務で導入しているとされています。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
経理の人手不足への対応でも、こうしたデジタル化は一つの重要な選択肢になります。
経理担当者が本当に時間を使うべき仕事
経理の仕事を効率化する目的は、単純に「経理担当者を楽にすること」だけではありません。
むしろ、経理担当者にしかできない仕事に時間を使ってもらうことが大切です。
例えば、
- 月次の数字を確認する
- 前年や前月と比較する
- 異常な数字を見つける
- 売掛金・買掛金を管理する
- 資金繰りを確認する
- 経営者に数字を説明する
- 今後の経営に必要な数字を考える
こうした仕事は、単純な入力作業とは違います。
数字を見て、「なぜこうなっているのか?」を考える仕事です。
会計サプリが大切にしている、
会計は、覚えるものではなく、考えるもの。
という考え方も、ここにつながります。
まとめ|経理が足りないなら、まず「経理の仕事」を見直す
中小企業で経理の人手が足りないとき、必ずしも最初に考えるべきなのが「採用」や「記帳の外注」とは限りません。
まずは、現在の経理業務を一つひとつ分解してみます。
そして、
- 自動化できる仕事
- 仕組み化できる仕事
- 外部に任せられる仕事
- 社内の経理担当者が判断すべき仕事
に分けて考えます。
特に取引数が多い会社では、記帳を丸ごと外注するよりも、まず会計システムやデータ連携を活用して、「入力する仕事そのものを減らす」ほうが合っている場合があります。
そして、それでも負担が大きい部分について、外注や採用を検討する。
人を増やす前に、仕事を減らす。
仕事を減らしたうえで、必要な部分を外に出す。
そして、人には「考える仕事」をしてもらう。
これが、経理の人手不足を考えるときの一つの基本的な考え方です。
経理の効率化とは、単に「作業を早くすること」ではありません。
経理担当者が、会社の数字を見て、考えて、経営に役立てられる時間を増やすこと。
そこまで考えて初めて、経理の「効率化」に意味が出てくるのではないでしょうか。


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